「森、道、市場 2018」愛知県蒲郡市 2018/5/11-12 感想Part1 思想編

「森、道、市場」に行ってきました。5月11日から13日まで、3日間開催される内の前2日。最終日は雨が降ったみたいなのだけど、僕が行った2日間は天気も良く、風も穏やかで、本当に良い時間を過ごした。

出演するミュージシャンが自分好みで、かつ入場料が安い音楽フェス、という認識で行ったのだけど、実際はそれとはちょっと違う印象だった。自分もそんなに全国各地のフェスをめぐっているわけではなくて、フジロックサマソニ、あと朝霧くらいなのだけど、それらと比べると明らかに異質。なので、各ミュージシャンのライブについての前に、その雰囲気について書いてみようと思う。

 

まず、どう異質なのかというと、徹底してエシカル。フードや雑貨のお店からびしびし伝わってくるオーガニックで本質的なこだわりもそうだし、お金を使わず、行為によって対価を払うような(こういう社会実験みたいなの、なんて言うんだっけ)エリアもあり、「社会にどう関わるか」をすごく考えさせられる。

そのきっかけとして誰もが直面することになるのが、トイレやゴミの処理の問題だ。些末なポイントに思えるけれど、「神は細部に宿る」というように、ここからこのイベントの思想の核が感じ取れる、と思う。

 

まず他のフェスのゴミ・トイレ事情を見てみると、みんな総じて浮かれていて、祭りの延長線上のできごととして看過している気がする。サマソニだと会場付近に潰れたハイネケンの紙カップが落ちているのをよく見かけるし、フジロックはゴミ捨て場に係の人が立っているから分別には厳しいものの、残飯を捨てるカゴには大量の食べ残しが捨てられている。

トイレは、サマソニはもともとの施設の水洗トイレを使っているのであまり問題はないが、フジロックはくみ取り式の簡易トイレ。そのため、期間の後半になるとトイレからはかなり嫌な匂いが漂うようになってしまうし、わりと大きな道のそばに男性の立ちションエリアがあって、それが黙認されていたりする。

では、森道はどうか。まず、ゴミに関してなのだけど、ビーチエリアはゴミ捨て場がそもそも用意されていなかった。ゴミはどうしたらいいんですか、とお店の人に聞くと「持ってきてもらえたら回収します」とのこと。フードを買って別の場所で食べて、そのゴミをまたお店に持っていかないといけないってけっこう面倒くさい。でも、それによって「おいしかったです」と一言伝えるコミュニケーションが生まれるし、食べ残しをゴミ箱に捨てる機会は格段に少なくなる。そこまで計算されているかはわからないけど、色々とブースを見ていたら「フードロス食材で作るピザ」の出店があったりして、主催側がそのことに関心を向けていることは確実だろう。

続いてトイレ。これは設備的にはフジロックなどと同じ簡易トイレだ。便器の上にゴミが放置されていることはたまにあったのだけど、清掃員の方が足もとを掃除したり、ゴミを回収したりしている姿を頻繁に見かけた。もともとゴミが捨てられていると、なんとなく自分のゴミを置いても大して変わらないような気がするけど、ゴミがまったくないところに捨てるのはちょっと憚られる。だったらここに置かないで、お店に返そうかな、と思ったりする。頻繁に清掃をしていたのは、そうした効果もあるのかも。このように、確実に利用するトイレ・ゴミ問題で、私たちの倫理性が問われる仕組みになっているのだ。

 

また、森道はスタッフの数がかなり少ない。基本、フェスってステージや入口の付近とか、ゴミ箱とか、至る所にスタッフがいるのだけど、森道はマジで全然いない。遊園地エリアになるとそこのスタッフの方がいるけど、それでも全然少ない。にもかかわらず、大勢の人を割いている他のフェスよりもトイレがきれいに保たれ、ゴミで道を汚すこともない、というのは、来ているお客さんの倫理観、あるいは共同体意識がきちんと機能している証拠だと思う。

 

ここで参照したいのが、主催・岩瀬さんへの「ジモコロ」によるインタビュー。

人気フェス「森、道、市場」の裏側には主催者の「熱狂」があった - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」

300近いマーケットを一人で管理しているというのは相当ヤバいのだけど、分割しないことでこのムラのない濃厚な空気感が形成されているのだろう。そしてこの中で、岩瀬さんは「利益を出すことが目的ではない」とも言っている。それはつまりいたずらに規模を拡大しないということでもある。そして、利益追求のために規模を大きくしたら、一つ一つへの対応がずさんになったり、一人ではまわしきれず、空気感が大きく変わっていくだろう。ただ、森道は最初の開催時に比べるとその規模が3倍くらいになっているらしく、それは逆説的だけど利益を追求しないやり方が満足度を高め、結果的に規模の拡大に繋がっているのだと思う。

 

また、記事中で岩瀬さんは森道は音楽フェスではなく「市場」であり、それゆえに入場料を安く設定している(入場に高いお金がかかるマーケットなんてないから)とも話している。「音楽で集客する」という発想なのだ。このニュアンスって、行くまでは僕も勘違いしていたし、「入場料がめっちゃ安いフェス」みたいなミスリードだけで客側に伝わるとそこが共同体の破れ目になってしまいかねない。それを考えると、これだけの動員で意識を共有できているのってちょっと奇跡的だ。いや、奇跡という言葉を使うのは失礼で、生産的ではないかもしれないけど。実際、これまでだって本質的なところを見誤らず、的確に進めてきたからこそここまで規模が拡大しているのだから。

 

色々と書いたけれど、ここまで共同体意識がしっかりあるイベントは、僕ははじめてだった。ちょっと取っかかりのなさを感じてしまったところもあるのだけど…。ただ、ちょっと話が飛躍するけど、こんな風に利益の追求を第一に掲げず、小規模な共同体の中で経済を循環させるやり方って、今後大きな経済成長が見込めないであろう日本にマッチしているし、もっと注目されるべきだと思う。そういう意味でも、すごく興味深かったです。

 

では、そういう偉そうなこと言ってる自分は具体的に市場で何を買ったのかというと、全然買わなかったんですけどね…。経済まわせよ!という突っ込みが聞こえてきそう…。いや、飲食はけっこうしたけど! 言い訳をすると、いかんせんリュックを常に背負っていないといけない状況だったので割れそうなお皿とか重い本とかを買い控えてしまったんです。良い感じのサングラスもあったんだけど恋人に「変だったよ」「似合ってない」と言われまくって買わなかったんだよな…個人的には気に入ってたのだったが。だから来年は車で、そしてもっと大勢で行きます。そのためには、キャンプエリアをもうちょっと拡充してほしいな…

長くなったので、音楽編はまた次回