2017/12/30 でんぱ組.inc『ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!』大阪城ホール感想

でんぱ組.incの『ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!』を見た。会場は大阪で、遠征なんてしたことなかったけれど、ライブが発表されて行かない、という選択肢は自分の中にはなかったように思う。はっきりとは明かされないけれど、なんらかの事情で1月の日本武道館公演以降、でんぱ組はライブができない状態で、そんな中で8月には最上もがの突然の卒業があった。大きな変化を遂げようとするグループの現在を見たいと思った。

復活の舞台となったのは大阪城ホール。付近には開場前からコスプレをしたり、痛バッグやグッズを身につけた人がたくさんいて、大勢の人がこの日を心待ちにしていたのだと改めて実感する。コスプレをした人たちの撮影会?も行われているというか、発生していて、お祭りだなあと思う。自分はそもそも物をあまり買わず、グッズもサイリウムくらいしか買わないし、コスプレもしないので、お祭りとして楽しめているかはちょっと微妙。何様だよと思うけど、でもそういう人たちを見ているのが楽しい。

機材トラブルで開場がずいぶん遅れていた。でも、開演はそこまで押さず。今回は宇宙モチーフということで、ステージには大きな宇宙ロケットが置かれたり、開演前も白衣の人がコントロールルームっぽいところを歩き回ったりしている。ステージの中央には、宇宙服を着て、見覚えのあるフォーメーションをとった5体のマネキンが。客電が落ちると、2分間の発射のカウントダウン。しかし残り30秒のところでカウントがストップし、メンバーの映像が途切れ途切れの音声とともに流れる。その映像を見ている間にいつの間にかマネキンとメンバーが入れ替わっていて、1曲目「Future Diver」のイントロが流れ出す。席から肉眼で確認することはできなかったけど、モニターに映る5人の表情が本当に嬉しそうで、こちらもサイリウムを振る手に力がはいる。続けざまに「バリ3共和国」を披露すると、会場はさらにヒートアップ。曲の最後、「行っけー!」って言うところで本当に「行けー!」と思って、ちょっと泣きそうになってしまった。実際、この2曲を終えた後のMCではみりんちゃんやねむきゅんがすでに感極まって泣いている。開始2曲目ですでに泣いてるって、あんまりない気がする。それも悲しくてじゃなくて、嬉しくて。

MCと自己紹介のあと、再び5人のステージが繰り広げられる。この前までは、もがちゃん含め6人でやっていたステージ。ダンスの立ち位置も変わっているだろうし、歌ももがちゃんのパートは他のメンバーに振り分けられている。もっと違和感があるかも、と思っていたけど、意外とすんなり受け入れられた。みんなきっとすごく練習したのだろうし、なんというか、代わりに歌っているんだ、という感じがした。なぞってみたり、対話するように自分なりの解釈で歌ってみたり、今ここにいない人がたしかにいたことを起点にして、歌っているように思えた。

 

代表曲やライブの定番曲で固められたセットリストの中、中盤で歌われた「きっと、きっとね。」の選曲に驚かされる。モータウンっぽいリズムの曲で、ビッグバンドでの生演奏が映える。そうして見ているとねむきゅんがやたらと号泣していて、さらに驚く。

どうしたんだろう…と思っていたら、もがちゃんが脱退して先が見えない時に聴いてものすごく励まされた曲で、ライブが決まったときに絶対に歌いたいと思っていた曲だったらしい。普段のねむきゅんはまわりの状況を見ながら立ち回っているけれど、冒頭からここまでで2回も号泣していて、その姿にぐっときた。

そのあと「でんぱれーどJAPAN」を歌って、いつもアンコールなどで歌われることの多いこの曲をこんな中盤にやるんだ!と不思議がっていたら、次の「Dear☆Stageへようこそ♡」で、ロングコートを着た二人の女の子が出てくる。すると、明らかに会場に動揺が広がった。「新メンバーが入る」。そんな情報が前日にリークされ、Twitterで拡散されていた。それが真実だと明らかになったからだ。

彼女たちは大サビでコートを脱ぎ捨て、隠されていたメンバーと同じ衣装で一緒に踊ってみせた。

これまで、割れんばかりだった声援が、この曲では少し静かだった。続く「でんでんぱっしょん」で二人が新メンバーであることがえいたその口から明かされたのだが、まだ自己紹介はなく、観客がきちんと事態を飲み込めないまま演奏がはじまった。新メンバーの二人は難しいであろう新体操のリボンもばっちりマスターして、ものすごく緊張しているのが伝わってきたけど、それでもしっかりとパフォーマンスをやりきった。「でんでんぱっしょん」は1,2を争う人気曲だと思うけれど、ここでも声援は純粋な歓声よりも、戸惑いの方が大きかったように思う。

 

新メンバーは、虹のコンキスタドール根本凪、ベボガ!の鹿目凛。ただ、メンバーが誰であるかというのは、戸惑いの中心ではなかった。でんぱ組は「W.W.D」などで「6人の絆」を繰り返し歌ってきていて、もがちゃんが抜けたこれから、5人で新たなでんぱ組がはじまるんだと考えている人がたくさんいた。新メンバーを迎え入れることはそれまでの絆とは違う物語を紡いでいくことで、そこには「もがちゃんが忘れられる」という気持ちもあるのかもしれない。

 

変わっていくことはやっぱり怖い。僕自身、新メンバーを迎えたでんぱ組をこれまで通り好きでいられるのか自信がなくて、戸惑ってしまった。でも、その新メンバーの登場のさせ方に、グループの美学を見た、とも感じた。「新メンバーがいます!」とおあつらえ向きにMCで発表するのではなく、まずパフォーマンスに参加させ、一緒にやってみせた。それは、ごちゃごちゃ言う前にまず見ろ、現場にいるんだからその目で確かめろ、と言っているようだった。ライブで発表することが予定調和にならないために、ファンとアイドルの信頼関係を一番感じられるステージで、パフォーマンスを通して伝える。その姿は、とても眩しかった。


見た上で、まだ受け入れられない人もいたと思う。僕の隣で見ていた女の子二人組も発表されたあと「嫌だー!」と叫び、泣きながら立ち尽くしてしまっていた。

だけどどんなに泣いても現実は変わっていくし、未来を切り開くために変えていくことだってある。そして前に進むことと忘れずにいることは、両立できるとも思う。そこに存在する感情は、変わってしまうかもしれないけれど。でも、感情が変わることを恐れて、そこに固執していても、守り抜けるとは限らない。というか、それが常に美しいままとは限らない。むしろ変わっていくことで、過去をずっと変わらない美しいものにすることもできるのだ。

でんぱ組は先を急ぎながら、その決断を正しいものにするために、過去が過去のまま美しくあれるように、「今」を全力で生きていた。もう二度と訪れない瞬間を、後悔しないように。だから本編の最後は「破! to the future」だったし、この日初披露の新曲「ギラメタスでんぱスターズ」にも、そんなポジティブな思いが詰め込まれていた。

 

新メンバーの加入には賛否両論あるようだけど、自分は賛成。情報だけではうまく受け入れられなかったかもしれないけど、現場のテンションを見ていると、ここからどんな新しいストーリーがはじまるんだろう、とワクワクする。ただ、新メンバーがこの二人で良かったのかどうかは、これからにかかっていると思う。今、評価を下してしまう必要はない。ここがスタート地点なのだ。

 

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しかしそれとは別に、でんぱ組は成長ストーリーをすごく構造的に作り出してるグループだなーと思う。武道館、アリーナ、海外ツアー、5周年のアニバーサリーなどを終え、外側へ向かっていくストーリーを一通りクリアしたから今度は内側でドラマを巻き起こす、そのための新メンバー加入という側面もあるのだろうか。新メンバー二人はどんどん成長していくだろうから、そのストーリーも見られるし、5人のこれまでとは違ったかたちの成長ストーリーも紡がれる。それがどの程度意図的なものなのかはわからないけど、うまいなあ、と思う。こう書くと意地悪な感じがしてしまうだろうか…。でも、それってまったく悪いことではないし、それで何かが決定的に冷めてしまうこともなく、彼女たちが背水の陣で戦っていることを際立たせる舞台装置の一つにすぎないのだと思う。大事なのは熱さがきちんと見えること、応援する人がそれを受け取れること。そしてその熱さを伝えるものは、ライブパフォーマンスだ。だからこそ、新メンバーが入ることをライブの場で発表しようとしたのが、本当に素晴らしいと思う。

 

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新加入の二人についてはあまり知らなかったけど、でんぱ組を聴いて引きこもりを脱し、アイドルになった…という経歴なのらしい。今年は「@JAM EXPO 2017」で若手アイドルと一緒にドリームチーム的な構成で「でんでんぱっしょん」や「ちゅるりちゅるりら」を披露したりもしていたけど、確実にネクストステップに進んでいるなあ。なんと形容していいかわからないけど、一つのアイドルシーンのトップというか、レジェンド的な位置付けになっている気がする。そしてそこではシーン全体が連帯しながら動いていて、ちょっとヒップホップとかにも似たつながり、熱気、ダイナミクスを感じる。今回の新メンバー加入はそれがグループ内にも持ち込まれた、という感じ。一つのグループの枠を超えて、概念的なものになりつつあるのかもしれない。