家探し、男ふたり 1

「ゲイカップルが関係を隠しながら家探しをするのってもどかしい!」ということをTwitterで書いたら微妙にたくさんふぁぼられた。昨日はリツイートをまったくされていないのに全然知らない人からふぁぼられることが他にもあって、相変わらずTwitter社のアルゴリズムはわけわからんなと思うのだけど、まんざらでもない。ということで、もしかしたら興味がある人も多いのかもしれないと思い、ここでひっそりと家探しの記録をつけてみることにする。
 
まず、今自分には2年弱付き合っている恋人がいて、6月くらいから本格的に同棲に向けて動き始めた。恋人は去年の12月、僕は今年の3月に今借りている家を更新したばかりなので特に期限はないのだけど、まあ年内に見つかったらいいね、くらいのもの。タイムリミットがないぶん、じっくりと理想の物件を探すスタンス。
物件を見に行ったのは昨日、8月6日がはじめてで、訪れたのは中央線沿いの某賃貸業社。前日に江戸川区の花火大会に行ってけっこうお酒を飲んでいたので寝坊してしまい、10分くらい遅刻してお店に向かう。
 
お店は駅からすぐ近いのだけど若干入り組んだ場所にあり、階段を降り、そのまますぐに3階のお店までまた階段でのぼらなくてはならない。1階にない不動産業社はあまりよくないという噂を聞いたことがあり、階段をのぼりながら(そんな噂はあんまり信じてないけど、エレベーターはあってほしかった)と思う。日差しの強い日で、ちょっとした階段の昇降でふらふらになった二人をお店の人は元気に出迎えてくれた。お店のロゴ入りのうちわであおぎながら、条件を伝える。これは恋人がしっかりとやってくれた。というか、僕は今住んでいる家を借りる時も「屋根とwifiとベッドとエアコンがあればいい」くらいにしか考えていなくて、内見もほとんどせずに決めたくらいで、正直あんまり家にこだわりがない。仕事が遅いので、駅から近いのが理想。今は家から駅までが3分くらいなのだけど、まあ10分以内くらいだと嬉しいなと思っている。あとはとにかく自分の部屋があることは必須。同棲している友人カップルでお互いの部屋がない、という人もいるのだけど、自分はひとりになれる場所がないと絶対にしんどくなるので、そこは譲れないところ。
逆に恋人はけっこう内装的なところにもこだわりがあるらしく、外観やエントランスもなるべく綺麗なところで、部屋も間取りだけでなく壁紙とかも気にして見ていた。まとめると、二人の条件はだいたい以下の通り。
 
・45平米以上
・2DK以上
・リビングが広い(テレビ、ソファ、ダイニングテーブルがおけるとベスト)
・2路線以上が使える
・最寄り駅まで徒歩10分以内
・築浅、あるいは古いけどフルリノベーションされていて綺麗であること
・浴室乾燥機があるか日当たりがよくて洗濯物を外に干せる
・独立洗面台がおしゃれ
 
最後の独立洗面台は恋人曰くかなり譲れないポイントで、今の家には独立洗面台がないので次に住むなら絶対に独立洗面台がほしいと考えていたらしい。加えてデザイン的なこだわりがはんぱなく、ノズルがプラスチックの安っぽいものだとダメらしい。担当の人と独立洗面台の写真だけをたくさん見ながらイメージのすり合わせをしていて、あまりの熱量に横で爆笑してしまった。担当のKさんに「独立洗面台のデザインにこだわる人いないですか!?」と聞いていたが、「いないですね」と即言われていた。だけどそういうこだわりって愛おしいなあと思う。自分にはそういう偏愛みたいなのがあまりないので、羨ましい。プラスチックの独立洗面台の前で毎朝ため息をつかれるよりはお気に入りの独立洗面台の前でご機嫌で身支度をしてほしいし、なるべく尊重したい。「独立洗面台NG」という完全におもしろな基準でダメになった物件もたくさんあったのだけど、その度に笑えてかなり楽しかった。
 
一方で、あんまり笑えないNGもある。それが件の「男性二人のルームシェア」だ。これはもう特筆事項として、大家さんに物件確認の連絡をする時に必ず伝えなくてはならず、これを伝えた時点で断られることがかなり多かった。どうして男二人のルームシェアがダメなのかというと、理由は大きく2つ。ひとつは「友人を誘って騒いだりしないか心配」、もうひとつは「どちらかが出て行く時に家賃をちゃんと払い続けられるのか心配」ということらしい。ちなみにこれは男性同士だけではなく、女性同士のルームシェアでも同様とのこと。
「友人を誘って騒がないか」という点については、異性カップルの同棲でも同じだけ可能性はあるだろう。ふたつめの家賃については、たしかにルームシェアをしている友人に話を聞くとみんな気にしているところではある。誰かが出て行く時は代わりを見つけないといけない、とか。でもまあ、極力みんな家賃を滞納することがないように気をつけているし(それは大家さんにという以上に、一緒に暮らす友人に迷惑をかけたくないという気持ちが働いているもよう)、そんなに心配しなくてもいいじゃんと思ったり。それに異性カップルの同棲だって、別れるリスクはあるわけだから。あんまり腑に落ちない。
しかしここで「ルームシェアじゃなくて、ゲイカップルなので同棲です」と言ったらどうなるのだろう。じゃあ安心ですね、オッケー!とはならないはずだ。以前やった仕事の取材でLGBTの認知度は50パーセントで、年齢が上になるほど低くなっていくというデータを見たことがある。大家さんは高齢の方も多いだろうし、わざわざKさんに電話口で同性愛の概念とかから説明してもらうことになったら申し訳なさすぎる。それに説明に至る前に「よくわからないけど信用できない」と言って断られるパターンもありそうだ。言うことにメリットがあんまりない。だけど言わないのは言わないので白々しく、悶々とするのも事実。
 
この日に見た物件は2つ。ひとつは阿佐ヶ谷の駅からすぐの物件で、アクセス良好ながら住宅街なので人通りは少なく、静かそう。個人的にはレンガ風の装飾が施された外観や内装の雰囲気も好きだったけれど、リビングが狭いことがネックになった。ルームシェア用の物件だったのかもしれない。それだとリビングは狭く、それぞれの部屋が大きい場合が多いのだ。でも僕の部屋は仕事机と本棚が置ければいいし、もう一部屋は寝室兼恋人の部屋となるので、こちらもそこそこの規模でいい。だけど部屋が狭くてリビングが広いって、ルームシェア用物件だとあんまりなさそうなんだよな〜。
 
2件目は落合にある物件。こちらも住宅街なので通りはとても静か。入ってみるととにかく日差しがきつくて暑い。そのわりにエアコンが一台しかなく、もしここに住むなら2台のエアコン増設が必要そうだ。間取りは僕の部屋になるだろう場所は必要最低限の広さで、そのぶんリビングが広い。理想的な間取りだったけど、なぜか壁紙がピンク色で、恋人はこれが気に入らない様子。予算的にもぎりぎりな上、壁紙を変えたりエアコンを増設したりと初期費用がかなりかかってしまうので、そこまでしてここじゃないと駄目とは思えず、契約にはいたらず。
 
なかなかすぐには見つからないね、と帰りの車の中で話していると、Kさんからこんな言葉をかけられた。
「お二人の探されている物件は必ずあると思うので、まだ条件を下げたり予算をあげたりする必要はないと思います。ただ、全部入りという感じの人気物件なので、空きが出てもすぐに埋まってしまうかと。でも、細かく物件をチェックしていればちゃんと見つかるはずです」
明るい声でそう言われて、なんとなく希望が持てた。まあ、じっくり探せばいいのだ。それに実際に物件を見てみると二人での生活が想像できて、わくわくする。一人でいる時間がないと本当に無理なので、実は同棲に対してかなりびびっているところもあるのだけど…。でも、びびっているのも本当ならわくわくしたのも本当だ。どうせなら楽しみながら探してみよう。