2017/5/14 D.A.N. ONEMAN TOUR "TEMPEST"@恵比寿リキッドルーム


D.A.N. - SSWB (Official Video)

代官山で一件取材をしたあと、友達とD.A.N.のライブを見た。快晴というには雲があったけれど、その分陽射しが穏やかな日で、リキッドルームまで歩いたので少し汗ばんでいた。ビールを飲みながら開演を待つ。チケットはソールドアウトで、わりと早い段階から客席は埋まっていたけど、今か今かと待っている感じではなく皆ラフな雰囲気。近くにいる男女が、最近良かったアルバムの話をしている。

 

ライブはほとんど定刻ではじまった。1stアルバム『D.A.N.』の1曲目、Zidaneではじまると、流れ込むようにニューEP『TEMPEST』からスティールパンが夏の情景を描き出すSSWBへ。音源ではムードのように漂っていたベースラインが、ライブで聴くとずっと分厚くなっていて、曲全体を完全に支配している。7分強のこの曲でステージを完全に掌握したバンドは、Ghana、Native Dancerと序盤から代表曲を立て続けに披露する。途中にSSWBが挿入されてはいるが、ここまで『D.A.N.』のアタマ3曲を曲順通りに演奏している。まるで彼らのレコーディングとライブの違いを浮かび上がらせるようだ。アレンジは基本的に音源に忠実で、そこに彼らの音作りに対する美学が垣間見えたりもするのだが、ライブだとレコーディング時にミュートした熱量を解放している感じ。耳で聴くよりも体で聴く音楽になっていて、その跳躍はたとえばトロ・イ・モワのライブを見た時と似た印象を覚えた。

中盤はThe xxとも共振する浮遊感を、小林うてなのスティールパンが彩るNavy、『Kid A』を現代の東京にチューニングしたようなDiveなど、アルバム曲を曲順を再構築して披露していく。この日はVJによる演出はなかったのだけど、Diveではちょっとポケモンショックを思い出すような激しいライトの明滅があったりして。リキッドルームでの初ワンマンを喜ぶ短いMCのあと、乾いたリズムが印象的なShadows、ドラマチックな展開がライブにより映えるNow it’s dark、そして10分近い大曲Tempestで本編を終えた。
『TEMPEST』EPの3曲はどれもダウンテンポで絡みつくように濃密だ。『D.A.N.』で見せたポップソングとしての表情は長い演奏時間の中で蕩けて、よりディープでスリリングなニュアンスをバンドにもたらしたと思う。

 

バンドを続けていく上で必要なあらゆるものへの対峙の仕方が透けて見えるライブだった。今日のライブでは1曲終えるごとにヴォーカル・桜井大悟が「ありがとう!」と観客に呼びかけていて、それは時折、クールなテンションに水をさすようにも感じられた。世界観をアーティスティックに貫いたライブも見てみたいと思う半面、MCでも話していた通り、今夜はバンドの一つの到達点としてのリキッドルームに、自分たちが立っている喜びが溢れていたのかもしれない。だとしたらなんていうか、リスナーに対して誠実だなと思う。

「これからもよろしくお願いします」というMCに続いて、アンコールで演奏したのはCurtain。後半に楽器がユニゾンする部分があるんだけど、堂々としていてバンドの未来が見えるようだった。

聴きながら今日のライブを振り返って、ヴォーカル・桜井大悟の歌詞の魅力を再認識。メロディや歌い方はクールに抑制が効いている中で、言葉そのものがグルーヴを生んでフックを作りだしている。Curtainは中盤「三万年も経って/独り身のムーンライト」あたりで想起される情景がロマンチックだし、撥音、促音のビート感が心地よく響く。この辺は、彼ら自身も影響を公言している宇多田ヒカルの言葉遊びにも近いものがあるかも。